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日経夕刊10/11ノーベル経済学賞

 ノーベル経済学賞は、自分がもらえないのはさておき、ほとんど毎年、発表の時間にウェブ中継を見ている。今年は家族とファミレスに行って、一人だけスマホを見ていた。ノーベル賞は、当てる人は当てる(昔、先輩に5年連続で当てた人がいた)。それには経済学全体を見渡す学知と、絶妙な下世話さが必要だと思う。わたしは当たらない。学知が乏しいうえ、下世話さが足りないのだ。

 選考委員のなかの実力者は、マクロ経済学系がクルセル、ミクロ経済学系はショストロームだろう。他のスウェーデン人を思い付かない。なお選考委員は大抵、自分の業績書に「委員です」と公開しており、そもそもスウェーデン人の経済学者はそう多くないので、「こいつかな?」と検索するとけっこう当たる。

 わたしは留学中にクルセルからマクロを習い、ショストロームは兄弟子にあたる(ともにトムソン先生の弟子なのだ)。といっても親しいわけではないが、彼らの学問志向や人間関係から、勝手にいろいろ推測する。

 結局、今年は対象分野が「契約理論」で、ハートとホルムストロームが受賞した。正統派の、きわめて手堅い授賞である。それで、日本経済新聞に電話取材でコメントを寄せました。本日10月11日(月)の夕刊に載っています。

  受賞の説明を読んで意外だったのは、Holmstorom (1979) "Groves schemes on restricted domains" Econometricaが引用されていないことだ。この論文はメカニズムデザインの金字塔のひとつで、「どのようなスムーズ定義域のもとでも、効率性と耐戦略性を満たすメカニズムは、VCGメカニズムだけである」という大定理を示したものだ。最高にエレガントな公理化である。

 これはとても有名な論文で、契約理論に関連付けようと思えばできるし、メカニズムデザインのプロであるショストロームが知らないわけはない。なのに授賞理由にこの論文を紐づけていない。メカニズムデザインには2007年にすでに授賞しているし、ほんとうに契約理論への貢献だけを理由にしたのだなあ、と思った。授賞のしかたとしては綺麗である。 

メカニズムデザイン―資源配分制度の設計とインセンティブ

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  そんな今日は、一限の授業を終えてから、一日中「人頭税」の文献を読んで過ごした。人頭税とは、担税能力に関係なく一人あたりいくらで課税する、歴史的に悪名高いやつである。人間の間引きがよく起こる。

 かつてイギリスではサッチャーがこれを導入しようとして退陣に追い込まれた。日本でも(あるいは琉球でも)、宮古島や八重山で1637-1903年のあいだ、苛斂誅求をきわめた人頭税が課されていた。 カナダではかつて中国系移民に対して、やはり過酷な人頭税を課していて、2006年にはカナダ政府が歴史認識の表明として公式に謝罪をしている。

 なぜ、わたしが目にする人頭税は、いずれもひどい重税なのだろう。課税というか、ほとんど奴隷化のレベルである。いっそ奴隷化を人頭税の極点と理解すればよいのだろうか。それとも軽い人頭税は、人目につかないだけなのだろうか。この辺のことがまだよく分からない。

近世琉球の租税制度と人頭税

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八重山の人頭税 (1971年)

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