書いてた途中の記録(その1)

 今度出す『多数決を疑う』を書く過程の、個人的な記録です。途中からなんか別の話になる。

  • 2014年5月中旬 企画会議が通った。仮タイトルは『投票の科学』で、スッキリしてていいと思う。本当は『投票の人文社会工学』にしたかったのだが、まあこれでよい。これでようやく書き始められる。企画会議を通らなくとも書けばよいではないかと思われるかもしれないが、やはり通らないと、気分がアガらないので書けない。
  • 6月 なんか結構な分量を書いた気がする。妻が体調を崩し、育児や家事も大変だったので、このころの記憶がない。何をしていたのか全く覚えていない。
  • 7月 この月もわりと書いた気がするが、やはり記憶がない。焼肉屋に行った回数が多かった気がする。7月20日ごろには前半の100ページが仕上がっていた。気合が下がり気味のときには、「我書く、故に我有る」の猪口孝先生『実証政治学構築への道』をソファに寝転がって読む。
実証政治学構築への道 (シリーズ「自伝」my life my world)

実証政治学構築への道 (シリーズ「自伝」my life my world)

 
  •  8月 子供とよく市民プールに行った気がする。あと、個人的経験でいうと、ルソーはいったん「チャクラが開ける」と急に分かるようになるのだが、私はこの辺りの時期にチャクラが開けて、ルソーに関するジャーナル論文も割とちゃんと読めるようになった。市民プールの「市民(citoyen)」となんか関係あるのか。こうなると筆も進む。しかし、ひたすら書いているうちに、肉体的限界を感じて「オレはこのままでは文筆を長くは続けられない」と悲愴に思うようになった。

 ここから本題だ。もともと私は運動する習慣がない。そして本を書くのは間違いなく肉体労働である。しかも結構な重労働で、それを続けていると筋張った体が軋んでいく。首と肩、背中と腰、さらには脚が、要するに全身が凝り固まってガチガチになる。

 私はここ7年ほど整体やマッサージ屋のお世話になりっぱなしで、しかも大抵の施術者から「これはひどい」と驚かれるというか、呆れられるくらいだ。強い施術もすべては「イタ気持ちいい」に変換されて、強さの要求も通う頻度も上がっていく一方だ。「もっと強く、もっと頻繁に」のジャンキーである。

 しかし「これは持続可能ではない」とさすがに思うようになった。このままだと自分はものを書き続けられない。筋肉が張って体が痛いし、呼吸も浅くなるので気分も悪い。心身ともに苦痛である。辛い、早く引退して老後を迎えたい、しかしその頃には体がボロボロだろう、と馬鹿みたいだが本気でそのように思っていたのだ。こういう発想は、多少は自分に酔っているのだが、それはそれで本当に困っているのである。

 というわけでなぜか、8月半ばから筋トレを始めた。市民センターのジムで、一回200円のところだ。なんか皆マッチョで、聞こえてくる会話の内容は「超回復に新理論」とか「チョコ味のプロテインは飲みやすい」とか、そんなのばかりだ。中には「Keio University」と書かれたジャージの学生がいるけれど、経済学部生でないことを祈る。必死にオールアウトしている姿を見られたくないからだ。

 そしてどうなったか。結論からいうと、ジム通いの効果はてきめんで、通い始めてから一切、整体にもマッサージにも通わなくなった。

 筋トレすると凝りが取れる、あるいは筋肉痛で凝りが分からなくなる、やがて筋肉が太くなり凝りにくくなる、凝っても自力で治せる、とかそんな感じだ。これって当たり前のことなのか、皆知っていることなのか。とにかく私はそれでうまいこといった。愛読誌もSocial Choice and WelfareからTarzanに変わった。人生観が変わったと言ってもいい。俺は加齢にあらがうのだ。たかが素人レベルの筋トレで大袈裟なことを言って恐縮だが、とにかく私の人生におけるエポックメイキングな出来事だった。 

Tarzan (ターザン) 2014年 9/25号 [雑誌]

Tarzan (ターザン) 2014年 9/25号 [雑誌]

 

 自分は多量のマンガを読む。脳内物質のバランス調整に不可欠なのだ。あだち充はもちろん大人買いしてある。あだち充を大人買いしたのは、島本和彦『アオイホノオ』の影響もある(その頃は深夜ドラマもやっていた)。そして、あだち充マンガの主人公は、必ず「走り込み」をする。理屈はよく分からんが、とにかく走り込みがすべての基本らしい。野球も水泳もボクシングも、すべてそうだ。というわけで、自分も走ることにした。せっかく筋トレしたので、使わないと何かもったいない気もする。もはや本を書くこととは一切関係ない。俺がそれを欲しているのだ。 

 誰がこんな話に関心を持ってくれるのか分かりませんが、また続きを書きます。

アオイホノオ 13 (少年サンデーコミックススペシャル)

アオイホノオ 13 (少年サンデーコミックススペシャル)