暗号通貨vs国家(ボツ原稿2.ブロック秘匿攻撃)

 もう一つのボツ原稿。誰に読ませても「分からん」「面白くない」と言われた。

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 近年では、半数に満たない割合のパワーの勢力でも、一定の悪さができることが明らかになっている(Eyal, I. and Sirer, E. G. “Majority is not enough: bitcoin mining is vulnerable” Communications of the ACM, 2018, vol 61-7, pp. 95-102)。これはレイテンシーを利用するものだ。悪だくみをするマイナーAはメガ数独の解答を見付けても、すぐにはノードたちに情報を送信しない。そして他のマイナーBが情報を送信したことを察知したなら、瞬時に自分も情報を送信する。

 あるノードはAの情報を先に受信して、別のノードはBの情報を先に受信する。どちらを先に受信しようとも、マイナー(すべてのマイナーはノードでもある)はどちらのブロックチェーンの先の問題を解くか、選択せねばならない。自分がどちらを先に受信したかは、あくまでその際の参考情報である。

 悪さをたくらむマイナーAは「元のブロックチェーン+ブロックA」の先に新たなブロックをつなげるべく、この瞬間もマイニングを続けている(ブロックA’のメガ数独を解いている)。

 

  • マイナーAは、運が良ければ、一番最初にブロックA’のメガ数独を解ける。その情報を直ちにノードたちに送信する(さらに別のメガ数独を解き続けることもできるが本書ではそのケースは割愛)。それを見た他のマイナーたちは「元のブロックチェーン+ブロックA+ブロックA’」を正統視しはじめ、その先につながるメガ数独の問題を解き始める。こうして「元のブロックチェーン+ブロックB」は相手にされなくなり、ブロックBは孤立する。マイナーBがその採掘に費やした作業は徒労に終わる。

 

  • 運が良くなければ、「元のブロックチェーン+ブロックA」と「元のブロックチェーン+ブロックB」のどちらが伸びるかは、他のマイナーの選択次第である。

 

 一見マイナーAは奇妙なことをしている。だが報酬の期待値を計算してみると、この行動が意外にも割に合うのだ。他のマイナーの労力をムダにする効果がプラスに働くからだ。

 かりにいまマイナーのうち、「元のブロック+ブロックA」を選択する勢力シェアがγ=0.4だとしよう。このとき、もしマイナーAの勢力シェアがα=0.273以上あれば、マイナーAはこの奇妙な行動をするほうが、利得の期待値が高まるのである。これはイーヤルとシラーという研究者が発見したもので、任意の割合γに対して、αが

               (1/γ) / (3-2γ)<α<1/2

の範囲にありさえすれば同じことが成り立つ。

 現時点では、このブロック秘匿攻撃(block withholding attack)が実際になされた様子はなく、潜在的な脅威にとどまっている。しかしモナーコインという新種のコインに対して、レイテンシーを用いた攻撃はなされたことがある。こうしたタイプの攻撃を、ビットコインの発明者サトシ・ナカモトは予想していなかっただろう。マイナーに報酬を与えてシステムを自律させる仕組みは、分散型の仮想通貨の画期的な点だが、これには改善の余地が大きい。 

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

 

 

暗号通貨vs国家(ボツ原稿1.サトシビジョン)

 拙著『暗号通貨vs国家』(SB新書)の「ボツ原稿」を、これからいくつか置きます。何となく「難しいかなー」「余計かなー」「ここ事実は不明かなー」など複数の理由があって、最終段階で削りました。なので本のほうには載っておりません。

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分裂とサトシ・ヴィジョン

  ビットコインがオープンソースである以上、ハードフォークが起こるのは止められない。とはいえBCHのハードフォークには、それまでビットコインが蓄積してきた信頼やブランドを削り取るようなところがある(Benjamin D. Trump, Emily Wells, Joshua Trump, Igor Linkov “Cryptocurrency: governance for what was meant to be ungovernable” Environment Systems and Decisions, 2018 Vol. 38, pp. 426-430)。

 BCHは人気の面で成功しており、時価総額は4位である(https://coinmarketcap.com, CoinMarketCap 2018/11/04)。日本の大抵の取引所で購入できる。

 ビットコインキャッシュ以後も、ビットコインからのハードフォークによる新コインは誕生している。ビットコインゴールド(BTG)やビットコインプライベート(BTCP)がその例だ。いずれもビットコインより1ブロックあたりの格納量が多いが、ビットコインほど人気はない。声量が豊かなだけの歌手にファンが集まらないようなものだ。

  18年11月には、BCHからのハードフォークで、ビットコイン・サトシ・ヴィジョン(BSV)なるものが誕生した。もはや宗教の分派のようだ。BSVのブロックサイズは128MBの大容量だが、ありがたみが増しているのかは不明である。

 BSVのハードフォークを主導するのは、クレッグ・ライトというオーストラリアの事業家だ。かつて「サトシ・ナカモトの正体は自分だ」と主張して、物議を醸した人物である。主張の証拠は乏しく、現時点ではクレッグは「自称・神」の座にとどまっている。サトシのヴィジョンをBSVで実現することで、クレッグは自らのあかしを立てようとしているのかもしれない。神であるサトシが姿を消してしまったので、やりたい放題する奴が出てくるのだ。

 ハードフォークの後、BCHとBSVは醜い争いを繰り広げた。互いに大金を投じて、相手のブロックチェーンの再編成を狙ったのだ。これをハッシュウォーという。バカみたいというか、ひどい愚行である。仮想通貨全体の信用を下げることなので、どこか余所でやってほしい。

 結局BCHは争いをおさめるべく「再編成プロテクション」という仕組みをソフトウェアに導入した。これは再編成が起きても、それを無視するための仕組みだ。あるブロックが接続されてから10ブロック延伸した後は、そのブロックからフォークした枝が最長にまで伸びても正統な台帳として扱われない。

 しかし後から伸びた枝でも、最長である以上は最大のハッシュパワーが注ぎ込まれているのだ。つまり再編成プロテクションは、作業量こそを正統な帳簿の証明とするPoWの否定である。

 ハッシュウォーは終わったが、BCHは、PoWを捨て去った。これは致命傷になるだろう。いくら支持者がこれまでのように「BCHこそがビットコインだ」と言い張ったところで、もう通らない。もはやBCHはビットコインとまるで別物になってしまったのだ。 

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

暗号通貨VS.国家 ビットコインは終わらない (SB新書)

 

 

ブログの再開

 2013年の秋から2017年の初夏あたりまで、およそ4年間このブログを書いていました。子育ての雑記・マラソンの記録・情報の告知が主な目的でした。いま思うとけっこう多く書いています。

 年月が経つうちに、子育ては落ち着き、フルマラソンをサブ4で走れるようになり、情報の告知はツイッターに移行しました。そうしてブログを更新しなくなり、閉鎖していました。

 で、このブログを一部再開しようと思います。子育てネタについてはけっこう個人的なことを書いていたので、削除しました(いつの間にか子どもはPCを使うようになったし)。再開の理由は、何となく、誰かの何かの参考になる気がするからです。あるいはたんに駄文を楽しんでもらえたら、それはそれで嬉しいです。

 たとえば、このブログを最初から読むと、マラソン未経験者が走りはじめて、走れるようになって、何度も失敗しながらサブ4を達成して、その後モチベーションを失う、という流れになっています。わりとこういう「本当に素人のランナーの長期の記録」はネット上にも本にもないので、初心者ランナーの方には参考になるかもです。かなり細かくタイムも書いています。

 私は以前ほど熱心ではありませんが、いまも走っています。これからも年に1~2回くらいはフルを走ると思います。私の父は69歳でフルを走っており、「父を越えたい」みたいな思いはあるのですが、自分が69歳までできるかは不明です。

 ブログでは、ラン以外にも、いろいろ下らないことや、政治経済に関することもいくつか書いていました。「いまはこんな風には思わないなあ、考えないなあ」という記述も結構ありますが、許容可能なレベルの恥だと思うので、大半はそのまま載せています。それらの多くは後に、本や論文や雑誌の原稿になっています。なので私の学問や見解みたいなものに関心がおありの方は、ブログではなくそれらをあたってください。

 ちなみに私自身がいちばん気に入っている過去記事は「パン食い競争」です。3年以上前のノンフィクションです。

toyotaka-sakai.hatenablog.com

八月末の雑記

 マラソンをやめたい。陸上界から引退したい。だが今年も横浜マラソンに当選してしまった。こんなことばかりで運を使っている気がするが、練習しないわけにはいかない。

 だがモチベーションが足りない。半年前に、東京マラソンで初のサブ4を達成してから、腑抜けになってしまった。目標がないのだ。サブ3.5は厳しい道だし、自己満足としては一度サブ4を達成すれば十分である。私は残りの人生を、「サブ4やったことがあるんすよ」といばり続けて過ごすのだ。もう努力する理由がないし、走るのが辛いなら歩けばよい。

 フルマラソンは身体に悪い。私の場合、走った日の夜は、微熱が出る。翌朝には微熱はおさまるが、免疫力が落ちるのであろう、その後に体調を崩すことが多い。家庭や仕事で人に迷惑をかけるまでが、フルマラソンのワンセットになっている。たぶん生物的にも、社会的にも、人間にはハーフマラソンくらいが丁度よいのだろう。

 だがハーフでは、どうも心が躍らない。ただ21kmを走るだけの単調な競技――栄養摂取・トイレ戦略・ペース配分を考えなくてよい――では、いささか刺激が足りない。

 八月も終盤。日が暮れるのが早くなってきた。何が言いたいかというと、今年もそろそろランシーズンだなあ、ということである。今年も東京マラソンの抽選に申し込んだ。どうか当選しますように。 

大人のための社会科 -- 未来を語るために

大人のための社会科 -- 未来を語るために

  • 作者: 井手英策,宇野重規,坂井豊貴,松沢裕作
  • 出版社/メーカー: 有斐閣
  • 発売日: 2017/09/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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日経新聞5/27「活字の海で」

 5月27日の日本経済新聞・朝刊の書評面「活字の海で」のコーナーで、拙著『ミクロ経済学入門の入門』がとりあげられています。わたしの「新書というジャンル」への愛がこもったコメントも載せてくれています。よろしければご覧ください。

 今日はTBSラジオ「久米宏のラジオなんですけど」に出演した。自分ではまだオンエアを聴いておらず、夜に静かに一人で聴くつもりだ。センテンスを短く、テーマを広げないようコンパクトに喋ったつもりだが、上手くいったかよく分からない。コンパクトにし過ぎた、無難に喋り過ぎた気もする。

 帰り道には、色々と「もっと、ああすればよかった」のように思うし、及第点に達しているならそれでよいとも思う。だがむろん何が及第点かは分からないし、及第点ではダメだとも思う。ひとり反省会である。家族と焼肉に行っても、不意に何か思い出して「うわぁー」と軽く叫び頭を抱えたりする。自意識過剰と向上心との境い目がよく分からない。

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

 

久米宏ラジオなんですけど5/27

 5月27日に、TBSラジオの「久米宏ラジオなんですけど」にスタジオ出演します。番組は13時から14時半までです。どうぞご聴取ください。私の出演は13:15~13:45くらいの予定です。

 たぶん前回よりは、上手く喋れるようになっている、はずなのだ。短く喋って、きちんと会話のキャッチボールをしたい。ラジオやテレビで喋るのは、学会や講演で喋るのと、全く違う。そんなことに気づくのに、あるいは教えてもらう機会に遭うのに、ずいぶん時間がかかった。新しいことをするチャンスが与えられるのは、何よりありがたいことだ。

 6月23日に慶應丸の内キャンパスで講演「多数決ではない決め方と、多数決の正しい使い方」をします。よろしければお越しください。

朝日中高生新聞5/21号

 5/21付け今週号の「朝日中高生新聞」1-2面に、長めのインタビュー記事「誰もが納得いく選挙は?」が掲載されています。ASAで購入できるようなので、ご関心のある方は、どうぞ入手のうえ、ご覧ください。カラーの顔写真も載っていて、酷薄な笑いを浮かべているよ。

朝日学生新聞社 ジュニア朝日

 わたしは朝日小学生新聞を読んで育ったが、そのころ中高生新聞はなかったと思う。あったら親がとっていただろう。うちには朝日新聞、朝日小学生新聞、週刊朝日、AERAが揃ってたのだ。

 小学4年生のとき、独りで週刊朝日の「過保護な親チェックリスト」をやったことを覚えている。子供心に「ひょっとして自分は過保護に育てられているのではないか」と思っていたのだ。

 誌面のチェックリストはみるみる埋まって、どうも自分の親は過保護であり、それゆえ自分は堕落しやすいことが分かった。そして「親が過保護だという自覚のもとで育とう」と決意した。ただし、いま思うと、自分は発育が危なげで、要保護な子どもだったような気がする。

 だから何というわけでは全くないが、とにかく小学4年生というのは、決してあなどれない生き物なのだ。自分の娘はいま小学3年生である。彼女は最近、ものすごく色々なことを考えている様子だ。ときどきわたしは、彼女の自我が、理解力が、心の奥底が、怖いと感じる。生まれる前から知っている自分の娘が、どうも自分とは別の人間のようなのだ。

 わたしも自分の子どもから「うちの親は過保護だ」と思われたりするのだろうか。あるいはすでに思われているのか。それとも保護が足りないのだろうか。「新しいゲームソフトを買ってほしければ、テストの問題を解いたあとの見直しを徹底せよ」と要求するのは子供を舐めた行為で、高圧的だと思われているのだろうか。他人の考えていることはさっぱり分からない。 

『ミクロ入門の入門』雑記3(現状報告)

 おかげさまで新刊『ミクロ経済学入門の入門』(岩波新書)の出足が好調でございます。うちの近所の本屋では売り切れていたが、どうやったら再入荷してくれるのか分からない。今日は書店員さんに「ここにあった、みくろけいざいがくの岩波新書の、さ、再入荷は・・・」と聞きそうになったが、挙動不審になる自信があったのでやめておいた。 

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

 

  そんななか『多数決を疑う』(岩波新書)の10刷りと、『マーケットデザイン入門』(ミネルヴァ書房)の4刷りが決まりました。実にありがたいことだ。とくに3,000円以上する『マーケットデザイン入門』が7年にわたり堅調に売れていることは、快挙と言ってよいと思う。手前味噌だが、自分の書いた本のなかでは、この本の完成度が一番高いと思う。世界初のマーケットデザインの本であり、2010年の出版当時はおそろしいほど売れなかった。 

マーケットデザイン入門―オークションとマッチングの経済学

マーケットデザイン入門―オークションとマッチングの経済学

 

  はじめて本を出版したのが2008年なので、自分も今や書籍市場のプレイヤーとしては10年選手に近い。現在のさまざまな方々との交流は、本を出していなければありえないことだったので、ほんとうに本を書いてよかった。

 わたしはいわゆる「世間」とか「大衆」が好きだ。自分自身、世間のなかで生きているし、まぎれもなく大衆のひとりである。だから、自分が読みたいものを書けば、それなりに世間様が受け入れてくれているのだと思う。これは自分が凡庸であることの証左だが、幸運なことであって、非凡な人は大変であろうと思う。

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

 

 5月3日(水)NHK・Eテレ22時「オイコノミア」は、おかげさまで好評でございました。どうぞ5月10日(水)の放送分も、ご覧いただけると幸いです。

 

『ミクロ入門の入門』雑記2(マンガ大賞)

 今年の「マンガ大賞」が発表された。わたしは絶対に『アオアシ』というサッカーマンガが一位だと信じていたが、一位は『響』という文芸部マンガであった。『アオアシ』は四位である。ちなみにわたしの『多数決を疑う』は新書大賞の四位なので、四位とは私のなかでは特別な良い順位である。

 いちおう『響』を買って読んでみて、うん、まあ、これも面白いと思った。でも自分は『アオアシ』のほうが、圧倒的に面白いと思う。何がどう面白いのか細々説明したいのだが、ネタバレになるのでやらない。でも正直、他の候補作と比べても、こいつは圧勝だと思うのよ。

 最近は、また一巻から最新刊の八巻までを読み返して、これまで気づいてなかった作者の工夫に新たに気づいたり、以前と同じところで落涙したりしている。テーマやストーリーも、絵や構図も抜群で、ものすごい知力と技術が投入されている。ほんとうに考えられている。

アオアシ(1) (ビッグコミックス)

アオアシ(1) (ビッグコミックス)

 

 メジャー雑誌の看板マンガには、ものすごい工夫が詰め込まれている。わたしは、そこでの工夫のいくつかは、学問的な新書でも採り入れられると思う。一例はページレイアウトだ。本を見開いたときの構図をどう作るか。そんなことを学者も考えたほうがいいと思う。文章ありきではなく、見開き2ページのなかで図を含めたレイアウトを意識して、文章を作成するのだ。

 わたしはこのことを、新條まゆ先生の傑作『バカまん』に出会って学んだ。そうした細かな工夫の集積が、『ミクロ経済学入門の入門』の読みやすさを改善しているはずだと信じている。

バカでも描けるまんが教室―新條まゆの(裏)まんが入門 (フラワーコミックススペシャル)

バカでも描けるまんが教室―新條まゆの(裏)まんが入門 (フラワーコミックススペシャル)

 
ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

 

 ところで『ミクロ経済学入門の入門』の著者が、Eテレ「オイコノミア」に出るよ。感心するのもがっかりするのも自由だから、とにかくまずは視聴してみよう。5月3日と10日、いずれも水曜日の夜10時からです。

『ミクロ入門の入門』雑記1(パン食い競争)

 新刊『ミクロ経済学入門の入門』が、今日いよいよ発売です。それに伴い、このブログに初めてお越しになる方もいらっしゃると思うので、ここが何なのか簡単に解説します。 

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

 

 このブログは日常雑記の置き場です。まれに言論めいたことを書くこともありますが、あくまで試し書きや、備忘録のようなもので、かなり適当です。一番多いのはマラソンにかんする記述だと思います。こちらはわりと真剣に記録や感想をつけています。

 更新は頻繁ではありません。でも約2年半続けているので、記事は結構たまっています。最初から読み進めると、たぶん次のような流れになっていると思います。

  • 『多数決を疑う』を書く途中で中年おじさんの体がガタガタになる。
  • 肉体改造というか、延命のための体づくりをはじめる。
  • ランニングを始めて10km走に出場するもひどくヒザをこわす(回復に3カ月)。
  • ハーフマラソンで2時間切れない。
  • フルマラソンで4時間切れない。
  • 2017東京マラソンで4時間切り達成。

 そんなこんなで駄文をいろいろ書き連ねていますが、自分がこれまで一番気に入っているのは幼稚園の運動会での「パン食い競争」の回です。自分以外の人が読んで面白いのかは不明ですが、わたしの周りではわりと評判がよかったものです。少なくとも情熱は込められている。

ミクロ経済学入門の入門(岩波新書)

 4月21日に岩波新書『ミクロ経済学入門の入門』を公刊します。ヨコ書きの選択肢もありましたが、やはり新書はタテ書きであるべきでしょう。眼球運動はタテのほうがしやすいしな。というわけで、タテ書きでミクロ経済学の新書です。カモン!

 岩波書店の「営業部だより」に寄せた短文をここに載せておきます。 

 経済学の入門書にちょっとした革命を起こしたい、というのが本書の作成のねらいです。通常ミクロ経済学の本というと、数式や複雑な図がたくさん出てきて、読むのがめんどくさいです。僕は経済学者ですが、それでも数式や複雑な図を追うのはめんどくさいです。あと、あんまり文体が硬い本は、読むのがしんどいほうです。

 この本はタテ書きの新書で、「入門の入門」なんて名乗っています。簡単な図と、わりとくだけた文章で説明が進みます。とても薄いので、たぶん短時間で読み終えられて、完読の充実感を味わいやすいと思います。

 でも内容はけっこうきっちりしています。標準的な均衡理論から、応用的なゲーム理論、さらにはIT社会を理解するためのネットワーク外部性まで扱っています。格差と不平等についても概念と測り方を説明しています。

 経済学に関心があるあなた、ミクロ経済学の授業が分からなくて困っているあなた、そして何となく興味をもってくれたあなたに、この本をおすすめします。第一章は「僕はコーラが好きだ」の一文からはじまります。あなたがコーラを好きでも好きでなくても、きっとすいすい読み進められると思います。

 さあみんな、4月21日には本屋へGOだ!

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

ミクロ経済学入門の入門 (岩波新書)

 

  そして5月3日と10日に、続けてオイコノミアに出演します。Eテレ水曜の夜10時からの番組です。3日は社会的選択理論、10日にはマッチング理論を扱います。面白いよ!

日比谷カレッジ4/28講演

 来たる4月28日(金)の19時から日比谷図書館の「日比谷カレッジ」で講演します。タイトルは『「多数決」を問い直す!―多数決が開けた21世紀のパンドラの箱―』です。定員200名の会場に、すでに90名以上の申し込みをいただいています! 先着順ですので、関心のある方は、ぜひお早めにお申し込みください。『多数決を疑う』の2017年ヴァージョンの話をする予定です。

http://hibiyal.jp/data/card.html?s=1&cno=2951

2000 年のアメリカ大統領選挙ではゴアがブッシュに優勢するなか、「第三の候補」ネーダーが参戦した。ネーダーは優位に立っていたゴアの票を致命的に喰い、ブッシュは「漁夫の利」で勝利をつかむ。翌年アメリカは同時多発テロの攻撃を受け、その後ブッシュは反撃の延長線上にイラク戦争を開始する。フセイン政権は倒したが、イラクの統治は安定しない。結局フセインの残党が勢力を盛り返して、それが「イスラム国」の母体となった。排外主義が世界を渦巻く2016 年、イギリスはEU からの離脱を国民投票で決め、アメリカはトランプ大統領を選出した。

いまこそ多数決を正面から論じるときだ(講師談)
多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

 

  そしてこの講演あたりの時期に、岩波新赤版の二冊目を出します。まだAmazonに書影はあがっていませんが、『ミクロ経済学入門の入門』といいます。私なりに新境地の勝負作。 文字通りミクロ経済学の本で、入門の入門です。なんだ入門の入門て? わたしもよう分からんが、Don't think, feel ! 

 『決め方の経済学』は、台湾に引き続き、中国本土での翻訳が決まりました。いやあ、なんか、われながらグローバル人材だわあ。

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

 

 

肌ツヤのよい話

 先日、鏡を見たらやたらと自分の顔の肌ツヤがよい気がした。頬に赤みがさしており、チークを入れたようだ。昨日の撮影のメイクが残っているのかと思ったが、顔を洗っても頬の色味は変わらない。妻には「何か特別な美容をはじめた? 正直に教えて」と言われた。いったい自分は若返ったのかと思いつつ、体に妙な寒気がする。

 体温を測ると39度2分あった。肌の色味がよくなったというより、高熱で顔が赤くなっているのだ。そういえば子供がインフルエンザに罹っており、それがうつったに違いない。

 内科を受診して、インフルエンザB型と判定され、吸入薬をのんだ。風邪のあらゆる症状が体に出ており、大量の薬を処方してもらった。いささか投薬が過剰ではないか、医療財政的に問題ではないかと、ぼんやりした頭で思う。

 自分は年末にインフルエンザA型にかかっている。その3か月後にB型にもかかるとは思ってなかった。ワンシーズンで二度インフルエンザにかかるのは初めてだ。両方とも、子供の小学校経由で感染した。大学でインフルエンザをもらったことはない。おそらく小学生は、大学生と違って、インフルエンザに罹患しても登校するのだろう。大学生が小学生より賢いことの一つの証左である。

 体温が39度を超すと、怖いと感じる。下手をすると死ぬのではないかという思いがする。たとえばいまフルマラソンを走ったら自分は死ぬであろう。先日若くして病気で急死した女性アイドルのことが頭をかすめる。その無念について思いを馳せる。

 そんなこんなで家で寝込んでいる。幸いにも一家全員インフルエンザなので、皆が寝込んでおり、あまり家族のことを人間的にかまう必要がない。食事はすべて出前である。さっきは辛口のカレーを注文したが、あれた喉に辛さが染みわたって失敗であった。

選挙マルシェ基調講演3/11

 本日18時半から公選法の改正を目指すイベント「選挙マルシェ」で、基調講演「多数決を疑う」を行います。会場は、飯田橋の東京ボランティアセンター・市民活動センターAB会議室です。

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

 

  今週末は、この講演と、岩波新書『ミクロ経済学入門の入門』のゲラと、NHK・Eテレ「オイコノミア」の準備で、忙殺されている。

 『決め方の経済学』は台湾に続き、中国本土でも翻訳が出ることになりました。ありがとう! 

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

 

 

東京マラソン・サブ4達成!

 東京マラソンに出走してきた。倍率12倍をくぐりぬけての当選だ。昨晩まで微熱があったが、今朝起きたら引いていた。一年前の横浜マラソンのときもそうだった。知恵熱みたいなものだろうか。最初は体調は悪くなくとも、悪くなったら棄権しよう、あるいは歩いて完走しようと考えていた。

 こんど詳しくレビューを書くとして、結果は3時間58分19秒。まさかの、念願の、サブ4達成であった。後半にまったくスピードが落ちなかった。結果は下記のとおりだ。5kmをつねに27分台で安定して走っている(29分台の2回はトイレでのタイムロス)。 

地点名
Point
スプリット (ネットタイム)
Split (Net Time)
ラップ
Lap
通過時刻
Time
5km 00:43:06 (0:27:04) 0:27:04 09:53:06
10km 01:11:01 (0:54:59) 0:27:55 10:21:01
15km 01:40:44 (1:24:42) 0:29:43 10:50:44
20km 02:08:28 (1:52:26) 0:27:44 11:18:28
25km 02:36:25 (2:20:23) 0:27:57 11:46:25
30km 03:06:06 (2:50:04) 0:29:41 12:16:06
35km 03:33:55 (3:17:53) 0:27:49 12:43:55
40km 04:01:53 (3:45:51) 0:27:58 13:11:53
Finish 04:14:21 (3:58:19) 0:12:28 13:24:21

 いつかはサブ4をと願っていたが、現実的には困難だと思っていた。これまで走った3回のフルマラソンは、どれもタイムが4時間17分から25分のあいだであった。

 わたしはいつも前半に飛ばして、後半にひどく失速する。せっかちな性格がそうさせるのと、普段の練習では長距離を走らないがゆえのクセだ。だが東京マラソンはすごい人数のランナーがいるので、前半に飛ばしようがなかった。なんせ36000人も走っており、路上は早朝の新橋駅みたいに混んでいるのだ。 

 そして気付いたら後半でも脚がかなりフレッシュに残っていた。そんで「もしやサブ4いけるか?」とラップを計算して、そのとおりに走れた。「市民ランナーあるある」のひとつだと思うが、走りながらよく割り算をする。

 わたしは「練習しないで40代のスポーツ未経験者がサブ4を達成する方法」という新書でも出すべきではないだろうか。めっちゃ気合い入れて科学的根拠のない本を書けるんだけどなあ。こんど出版社の人に相談してみる。

 三田の近くでゼミ生が応援してくれていた。どうもありがとうございました。