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袋井フル42km(その4)

 前半はハイペースで走ったつもりだが、トイレやら補給やらで時間がかかる。何だかんだで結局はハイペースではなく、2時間の時点で、22kmには届いていない。とにかくいまの目標は次の10kmをキロ5分30秒で走ることだ。

 この10kmの記憶はほとんどない。よくわからんが必死であったのだ。特に楽しかった記憶も、苦しかった記憶もない。山の坂道が多かった気がする。

  • 22km 5:31
  • 23km 5:34
  • 24km 5:41
  • 25km 5:42
  • 26km 6:09 水分補給した

 こうして振り返ると、この5キロは一度も5分30秒を切れていない。すでに脚が消耗してきているのだ。

  • 27km 5:32
  • 28km 5:36
  • 29km 6:37 トイレがすいていたので行った。

 トイレで1分ほどのタイムロス。いちいちこんなのを「ロス」と考えるな・普通に楽しめと今は思うのだが、そのときは心の余裕がなかった。とは言えそれなりに快走ではある。

  • 30km 5:39

 自分のなかで最長、未踏の30kmに到達である。なるほど30km走とはこんなものか、案外できるものだ。マラソンは30kmが折り返し地点というので、そのように心づもりをする。

  • 31km 5:55

 いかん、キロ6分近くまでタイムが落ちている。冷静に考えれば、すでにこの時点で4時間切りなど絶望的、100%ムリなのだが、その事実を受け止められずにいる。どうにかなるのではないか、奇跡のように持ちこたえるのではないか、との希望にすがっている。

 脚が重くなってきている。顔が上がらず、下向きになる。沿道で手を振ってくれる地元の子供たちに愛想笑いもできない。もともとそんなに清くない心が濁りはじめる。

  • 32km 5:32

 この1kmは、われながら本当によく頑張ったと思う。えらい、根性ある、自分をほめてやりたい。脚が重いなか、無理やり5:55から5:32に早めたのだ。しかしまだ、これではダメだ、5:30以内でないとダメなのだ。もっと全力を出すのだ。

  • 33km 5:49

 全力を出して、5:49だった。これはもう4時間切りなど絶対に無理だ。こんなことは普通に考えれば、21km過ぎの地点でとうに分かっていることだ。しかし冷静を失して普通じゃないので、気付くのに33kmまでかかったぜ! そしてこのとき、私のなかでスコーンと何かが抜けた。

  • 34km 7:13

 すごいタイムの落ち方ではないか。本当に「スコーン」と抜けたのだ。気力がついえたのか、グリコーゲンが枯渇したのか、よく分からないが、端的に言って走力不足であろう。すでに31kmあたりで走力は限界に達していた。それを33kmまで無理やりペースを維持して走っていた。それができなくなっただけだ。どんどん人に抜かれていく。

  • 35km 7:54

 何十・何百人単位で抜かれていく。精一杯走っているのだが、身体がなかなか前に進まない。気合は上等なつもりだし、上半身は普通に動くのでグリコーゲンは残っているはずだ。脚はケガしてないし、マメもできていない(できそうな箇所には事前対処してある)。しかし遅くしか走れないのだ。ほとんど「走る」の速さに到達していない。

 ああ、そして、寒い! キロ5分台で走っていると、体温が高くなるので、寒中のなか薄着のランでも体は温かい。しかしキロ8分近くとはもはや早歩きの速度、体温がぜんぜん上がらないのだ。ビュウと吹く木枯らしが身体を貫く。ポケットに入れていたアームウォーマーを装着するが、それでも寒い。

 残り8kmか。普段ならキロ5分の40分で終了、軽めの練習だ。しかしキロ8分かかるとは、8×8=64分! こんな寒中のなか、あと64分も走るのか。何と途方もなく長い時間だろう。

  • 36km 8:08

 平地なのに、ここまでタイムが落ちるものなのか。たしかこの辺りは曇り空の下、線路沿いを走っていた。寒くて、気持ちが下がる。いったいいつゴールするのだろう?

 頭がわけが分からなくなって、ランと無関係なことを唐突に考え始める。「りっ、りっけんしゅぎ?」 ああ、来週は長谷部先生の講演に行くのだ。せっかくの機会、いろいろ質問するのだ。何を聞こう? とか考え始めたが、もちろんこんな状態では何も考えられない。「はっ、イカン」と思って正気に戻った。立憲主義のことはマラソンのダメージが回復してから考えよう。

  • 37km 7:18

 正気に戻ったら、少しタイムが回復した。遅いことに開き直った。その心境に至るのに、3kmくらいかかった。そして走れることや、家族や職場や友人やらに、感謝の祈りを捧げた。ああ、信仰も持たないくせにそんな宗教的なことをするのは、きっと最近「それとも」を読んでいるせいだ。なんだこの絶妙なタイトルは。

共和国か宗教か、それとも:十九世紀フランスの光と闇

共和国か宗教か、それとも:十九世紀フランスの光と闇

  市民ランナーの父が、以前「親の言うことは聞いておくものだ」「補給所では出ているフードを全種類食べるように」とアドバイスしてくれたのを思い出す。わたしも自分の子供を見ていて、この人たちはもっと親の言うことを聞けばいいのに、とよく思う。というわけで、次の補給では開き直って、父の言いつけ通りフードをたくさん食べることを決めて、重い足取りで走り進む。

  • 38km 9:36

 補給所に到着すると、いつしか曇天の雲がきれいに去り、晴れ渡っていた。この9:36という非常に遅いタイムは、補給所で完全に走行停止して、のんびりとデザートタイムを満喫したからだ。フルーツがたくさんあった。

 とくにミカンがおいしい。ミカンは消化によくないし、栄養もそんなにラン向けではないと思う。だが、とにかくラン中のミカンはおいしくて、心身が生き返る。

 そして苺を食べはじめたら、あんまりおいしくて、止まらなくなり8個食べた。もうこの辺はアニマル化しているので節操が無い。うほうっほ。こんなに苺を夢中で食べたのははじめてだ。あまずっぱー。甘みと酸味が心身に染み渡る。バナナもうまい。

 そして、ああ、ここにはコーラがある! これはたぶん大会運営ではなく、地元の方の私設エイド。コーラは大人気だ。小さなカップで2杯飲んだ。コーラほど体にいい飲み物は他にないと思う。心身がリフレッシュされる。ああ、残りの約4kmを情熱的にフィニッシュしよう、と前向きな気持ちになる。

  • 39km 7:49

 前向きな気持ちになって、しかしのろのろ走っていると、しばらくして上り坂が始まった。これは会場のエコパへの道で、要するにこれから会場までひたすら上り坂なのである。誰だこんなコース考えた奴。俺に試練を課したいのか。

  • 40km 7:16
  • 41km 7:34

 走っているうちに、このコースは試練というより、刑罰ではないかと思うようになった。黙々とこなす果てしなき単調作業。多数決を疑った罪への罰だろうか。思想犯だ。周りのランナーも皆、明らかにペースが落ちている。こんなコースで一緒に苦しむ同胞たちに、独特の連帯さえ感じるぜ。ソリダルノシチ!

  • 42km 8:02

 これは私が遅いのではなく、コースを考えた奴が悪いのである。ぐにゃぐにゃした坂道を上がって、エコパ近辺に着いてから、そこからがまた、なんか長い。なんだこの迂回路みたいなコースは。ハイセンスな匠(たくみ)がサディスティックに作った、絶妙な加減で心を折りにくるコースだ。

 エコパ内のトラックにいよいよ突入。スタジアムの付近から、そこまでが遠かった。トラックも広いが、ゴールが見える。電光掲示板にタイムが映っている。4時間23分台? 手を広げてゴールする。ゴールするときは下を向き走る足元を見つめて通過を確認。走り終え、息を戻しながら、「ああ、走り終わった」と思った。静かな喜び。ゴール後にジューシーなクラウンメロンを二切れいただいた。有り難い。

  • ラスト0.86km 6:34

  マラソンは42.195kmというが、コース取りの関係上、計42.86km走った。ちょっと長すぎではないだろうか。42.5kmくらいだと予想していたのだが。

 記録証をもらいに行く。記録はネットタイムで、4:24:39(グロス 4:25:10)であった。4時間半は切れたので、サブ4.5は達成である。当初の堅実な予想通りの、そしてそれゆえ甘い期待の実らなかった、何とも実力通りの結果だと思う。ああしかし、去年の今頃は、まさか一年後に自分がフルマラソンを走るなんて、思っていなかった。【次回最終回へ続く】

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