袋井フル42km(その2)

 大会当日の朝、宿泊先で目が覚めて窓の外を見たら、曇り空であった。雨が降りませんようにと祈りながら、顔を洗ってウェアに着替えた。午前7時。朝ごはんを食べねばならない。

 ランの本にはよく「大会当日の朝は、スタート3時間前までに消化の良いものを食べておくこと」のように書かれている。しかしスタートが朝の9時だとして、6時までに食べておかねばならないとは、早起きを求めすぎではないだろうか。だがこれは、固形物メインの朝食だからそうなるのであって、もっと流動食っぽいものにしたらよいのではないか。

 と思って、スポーツようかん、科学的なゼリー、糖分系チューブなど、事前に買い込んだ特殊なフードを朝食にした。でもこれだけだと、やはりお口がさみしいので、おにぎりも3つ食べた。飲み物はプロテインドリンクだが、米と合わない。 本当は、ほうじ茶やコーヒーが飲みたいのだけど、カフェインは利尿作用が強いので大会の日には飲めない。

ザバス プロテインドリンク 200ml×6本

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 宿をチェックアウトして、電車と徒歩で会場に向かった。足を使いたくないので、本来ならタクシーに乗りたいのだが、マラソンの交通制限のためそれができない。こういうとき、チッ自分だけは交通制限から除外ならいいのになと思うのだが、この心理は節度のない利己心(アムール・プロプル)というもので、私の魂のレベルが低いとしか言いようがない。

 意志を、意志を一般化せねばならないのだよ、と思いながらJR掛川駅まで歩いた。 自分がいつも出場している大会は河川敷での開催で、交通制限のかかる一般道を走るのは今回が始めてだ。ご不便をおかけする世間の皆様に申し訳ない。

 JR掛川駅からひと駅、愛野駅に到着、とことこ坂道を上る。他のランナーの格好やシューズを観察しながら歩くのはなかなか楽しい。15分ほどで巨大な陸上競技場エコパに到着した。とてもでかい会場で、屋台もいっぱい出ていて、お祭りのよう。

 会場でゼミ卒業生のスズキ君を探すが、人が多すぎて全く見つけられない。たまたま同じ大会に出場しているのだ。私がフルに関心を持ったのは、彼が学生のときゼミで、フルを走った話をしてくれたのがきっかけだ。まさかその約一年後に同じ大会に出場するとは思わなかったぜ。お・待・た・せ・!な気分だ。

 スタートのトラックには人がもうたくさん集まっている。予想タイムが「3時間半から4時間半」のエリアに移動して、号砲を待つ。私はタイムが4時間を切ることを心底期待している。初のフルマラソンで「サブ4」なんて、ああ、なんと格好いい! そして私は、自分の期待の持ち方が楽観的であることを知っているので、この期待を下方に補正して、予想を4時間20分と立てている。

 遠くのステージで、袋井市長がスタート前の挨拶。曇天の空を見上げるが、雨は降らなさそう。気温も湿度もちょうどよく、ランに適した日だ。満員のランナーで埋め尽くされた会場は祝祭のざわめき。非日常である。カウントダウンが始まり、号砲が鳴った。皆が競技場のトラックに一斉に脚をけり上げる。