5月前半の近況

 忙しい。本当に忙しい人はいちいち言わない気がするけど、忙しい。詰まった義務・予定をこなすだけで、インプットの時間が取れない。自分はもうほとんど残りカスで、このままだと学者として枯渇する。だから往復32kmの自転車通勤を始めた。

 何がどう「だから」なのか説明すると、忙しいので夜ラン・ジム通いの時間がなかなか取れない、だから通勤を有酸素運動に置き換えて、なんかこう、時間の使い方を効率化した。自宅から研究室までの片道16kmに、最初は70分かかっていたが、今は慣れて55分で行けるようになった。電車だと大体40分なので15分しか違わないし、脚で走ってLSDだと110分なので倍速だ。

 最初の頃は、都心は信号が多いので、ストップ・アンド・ゴーの繰り返しが嫌だった。これを嫌がる気持ちというのは、とてもよくないもので、信号を無視したくなるし(しませんが)、信号近くでの運転が雑になる。

 しかしギアチェンジの細かいやり方が分かるようになったら、ストップ・アンド・ゴーが上手にできるようになった。最初はそれが分からず、ずっと一番重いギアで走っていたのだ。これは単に小学生のころから漠然と、ギアが重い=速い=ラクのように思っていたからだ。あとはマンガの悪影響(真波君の山登り)。もちろん間違っている。

  それから手への衝撃が、なんか地味にビリビリくるので、サイクリンググローブを買った。これはとても快適で、脱着用フックがあって便利。半指タイプで、なんか少年マンガ的にかっこよくて、空に手をかざし呪文を唱えたら魔界から何かを召喚できそう。

  というわけで、公道を安全かつ気持ちよく走れるようになった。おかげで時間が作れて、岩波書店の月刊誌『科学』に寄稿する、多数決についての3000字の原稿を書けた。掲載はもうちょっと先。気骨ある雑誌に寄稿できて光栄だ。

科学(岩波) 2015年 05 月号 [雑誌]

科学(岩波) 2015年 05 月号 [雑誌]

 岩波新書『多数決を疑う』は、有難いことに、好意的に書籍市場に迎えていただいた。いち愛書家として、読者の方には、まずは読み物として愉しんでもらえれば、何より嬉しい。新書は800円以下・200頁以内、通勤時間や週末に2時間くらいで読めるものがよいと思う。単に現代人の機会費用の問題だ。もちろん内容充実で大部なものも、それはそれでよいのだけれど。

 今作はアマゾンだと「選挙」と「日本の政治」の分類に入っている。つまりこれまでの自著がいる「経済学」の分類に入ってない。それを見ると何かこう、「いつの間にか知らない街に来ていた感」がある。しかしこの本は紛れもなく、選挙と日本の政治についての本なので、そりゃそうだと思う。この本は2時間で読めると思うけど、書くのに39年かかった。 

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)