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社会的選択理論への招待

 新刊『社会的選択理論への招待 ――投票と多数決の科学』(日本評論社)が刷り上がって、先日、書店より一足先に著者の手元へ来ました。あと数日で、店頭やオンライン書店に並ぶと思います。  

社会的選択理論への招待

社会的選択理論への招待

 

  大まかに内容を紹介していきます。まずは

  • 第1章 問題の出発点

ですが、ここではフランス革命前のパリ王立科学アカデミーで展開された、ボルダとコンドルセによる黎明期の議論について述べます。これが社会的選択理論の原点です。原点から見通すと、社会的選択理論は、ぐっと分かりやすくなるというか、面白くなります。この章はほぼ読み物のように読めるはずです。

 次に

  • 第2章 正しい選択への確率的接近

では、コンドルセの議論について主に触れます。「人々が自分の頭を使ってきちんと考えるならば、多数決の結果は正しい可能性が高い」という陪審定理が議論のハイライトです。また、コンドルセの真の意図が「最尤法」にあると見抜いた、ペイトン・ヤングの考察についても紹介しています。

 そして

  •   第3章 ボルダルールの優越性

ではボルダルールが如何に優れているか論じます。これら議論の多くは歴史に埋もれていて、おそらく専門家もあまり知らないものです。

 現在、社会的選択理論のフィールド代表誌はSocial Choice and Welfareですが、それが創刊される1984年以前にはPublic Choiceに多くの論文が掲載されていました。これがおそらくひとつの歴史的断絶になっていて、「1984年より前のPublic Choice」に発表された重要成果を現在の理論家はあまり知らない、というのが私の推測です。

 次いで

  •  4章 政治と選択

では、いわゆる実証政治理論(Positive Political Theory)に関係の深い議論を、多数集めました。単峰性、中位投票者定理が議論の中心です。ギバート・サタスウェイト定理も図解しています。

 そして、日本の政治に関することも、いくつか触れています。現在、日本国憲法の改憲条項(第96条)では、衆参で「3分の2」以上の賛成が求められています。これを自民党などが「2分の1」まで下げようとしていますが、それがなぜダメなのか、社会的選択理論の知見を用いて論じます。「3分の2」のひとつの根拠を与える、Caplin-Nalebuffの「64パーセント多数決」についても紹介します。

 社会的選択理論は、メカニズムデザインやマーケットデザインと同列の、「すごく使える」「すぐ役に立つ」「使ってなんぼ」の応用分野です。オークションやマッチングの理論が実用へと花開いたように、社会的選択理論もそうあるべきだ。本書はそれに向けた、私なりの試みの一端でもあります。

 次の章

  • 第5章 ペア比較の追求

では、アローの「不可能性定理」と「可能性定理」を軸に話を進めます。アローの不可能性定理は、歴史上の意義はきわめて強いですが、実用上の意味はほとんどありません。つまり「不可能」と言っても、全然深刻ではない。これについて丁寧に述べているのは、本書の特長の一つです。

 そして

  •  第6章 社会厚生

では、社会厚生基準や正義論、リベラルパラドックスについて論じます。筆者としては、わりと丁寧に、原典からの説明をしたつもりです。最後の

  • 第7章 投票と人民主権

は、社会的選択理論をその周囲へと接続させる試みです。