TBSラジオ12/17「久米宏 ラジオなんですけど」

 今日はTBSラジオ「久米宏 ラジオなんですけど」に電話出演した。公開生放送をするかしないかを決めるリスナー国民投票へのコメントだ。自宅の電話での会話が電波に乗るというのは、不思議な気がするが、慣れてはきた。予定時間の前に、電話の前に座って、発声練習をする。「なにぬねの」が苦手なので「なねにぬねのなの」には時間をかけ、両手で顔の筋肉をもみほぐす。

 ラジオに出て「今日は上手く喋れた」と思えるとき・そうでないときがある。もちろんそれは自分の主観にすぎない。リスナーがどう思ったかは分からないし、自分で番組を聴きかえす度胸はない。

 ただ、上手く喋れたと思えるのは、話せた内容はともかく、淀みなく喋れて、話に流れがあって、最後をきちんと締められたときだ。そしてこれは、私の技術というよりは、私を誘導するパーソナリティの技術である。久米宏氏が、こうした技術の超達人であることは、いうまでもない。会話後の私には心地よい感覚だけが残る。凄いものだ。

 久米さんほどの高みはもちろん望めないが、自分ももうちょっと日常の会話が上手になりたいと思う。それは性格のみならず、少なからず技術の問題だと思うのだけれど、どうしたら上達するのかよく分からない。

 

 今日で年内の、取材、講演、出演などの喋り仕事をすべて終えた。12月下旬のものは、年明けの1月にまわしてもらった。

 短期的には、新著を一冊書きあげねばならない。その合間に某思想誌に4000字の原稿と、某経済誌に5000字の原稿と、某文庫に6000字の解説を書き、某共著の原稿8000字×3の改訂をせねばならない。どの仕事も喜んで引き受けたものだが、完遂できる気がしない。

 精神的にキツくなると、「実は自分は天才で、あるとき夢のように素晴らしい原稿が短時間で出来上がる」と夢想することがある。もちろん夢想は夢想に過ぎないので、時間をかけコツコツ書き進めるしかない。やりたいことは色々あるし、企画を考えているときは楽しいものだが、実際にやるのは大変である。

 気分転換に犬の散歩をして帰宅すると、郵便受けにアマルティア・セン『経済学と倫理学』(ちくま学芸文庫)が恵投されていた。大学ではなく自宅に本が送られるのは珍しい。どうもありがとうございました。

アマルティア・セン講義 経済学と倫理学 (ちくま学芸文庫)

アマルティア・セン講義 経済学と倫理学 (ちくま学芸文庫)

 

 

「決め方」重版御礼

 12月は様々な会合だらけでひたすら人と喋っている。今日は『多数決を疑う』の講演をします。場所は千代田区の日本大学経済学部です。

学術講演会のお知らせ|中国・アジア研究センター|研究所・研究センター|日本大学経済学部 

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

 

  先日は、日本経済新聞などが主催の「エコノミスト懇親会」に出席してきた。普段お世話になっている人にまとめて挨拶できたり、今後の仕事の打ち合わせができるので、たいへんありがたい。黒田総裁が乾杯の音頭、途中で安倍首相が挨拶にいらした。あとは、ゼミの卒業生の父上が一人いらした。世の中は狭い。

 そして『決め方の経済学』(ダイヤモンド社)に重版がかかった。初刷りが多めだったこともあるが、重版まで5カ月かかった。これでようやく肩の荷が下りた気がする。読者の皆さまに深謝いたします。 今日あたりから2刷りも書店に並び始めます。

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

 

  この『決め方の経済学』の編集者氏が担当している別の出版物に、陰山メソッドで有名な陰山先生の「陰山手帳」がある。書店で見比べたが、自分には「ライト」のほうがよさそう。というわけで、来年から「陰山手帳ライト」を使うことにした。一行日記をつけるのだ。

家族も自分も幸せになる!  陰山手帳2017 ライト版

家族も自分も幸せになる! 陰山手帳2017 ライト版

 

 

直近のメディア掲載・出演など

 ここ最近の活動でございます。関心のある方はどうぞです。

  • 11月21日の読売新聞・文化面に、国民投票にかんするロングインタビューが掲載されました。誌面だとカラー写真付きだ!

  • 11月25日に集英社イミダスに「ダフ屋のいないコンサートチケット販売は可能か? オークションを用いたチケット市場の効率化」を寄稿いたしました。転売業者が悪いのではなく、転売業者を必要とするコンサート事業者の売り方が悪い。

  • 11月25日の毎日新聞・大阪版で、おおさか維新の会が進めている「大阪都構想への再挑戦」へのロングインタビューが掲載されました。再挑戦にネガティブな見解を述べています。紙面だと写真付き。http://mainichi.jp/articles/20161125/ddn/004/070/052000c
  • 12月3日のTBSラジオ「久米宏 ラジオなんですけど」に電話出演いたします。だいたい13時15分から13時30分くらいに出演します。

  • 12月6日発売号のサンデー毎日に、多数決に関するインタビュー記事が掲載されます。
  • 12月15日に日本大学の中国・アジア研究センター主催で講演「多数決を疑う」をいたします。詳細はまたここで連絡いたします。 
    多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

    多数決を疑う――社会的選択理論とは何か (岩波新書)

     

     

 

読売11/21文化面、よこはま月例マラソン

 11月21日の読売新聞・文化面に、長めのインタビュー記事が掲載されました。新聞に顔写真を載せていただくことは、しばしばあるのですが、今回は初のカラーです(喜んでいる)。オンラインの無料版には掲載されていないようです。

 んで、もっとまともな配色の服装にすればよかったと、反省している。わたしの研究室のロッカーには一枚ジャケットが入っている。適当なTシャツを着ていても、ジャケットさえ上に羽織れば、白黒写真なら割ときちんと見えるように思う。だがカラー写真だと必ずしもそうではない、ということを今回学んだ。そしてあらためて読売新聞を眺めていると、全体的にカラー写真が多いことに気付かされる。新聞も色々変わっているのだなあ。

 そして話はぜんぜん変わるが、昨日は鶴見川沿いを走る、よこはま月例マラソン10kmの部に出走してきた。目標は、キロ4分45秒あたりを維持して、48分以内でゴールすることだ。結果は、GPS時計によるマイ計測だと

  • 1km 4:27
  • 2km 4:34
  • 3km 4:29
  • 4km 4:42
  • 5km 4:40
  • 6km 4:41
  • 7km 4:45
  • 8km 4:45
  • 9km 4:44
  • 10km 4:41
  • 残余 0.04
  • 計 46:38

であった。公式記録はもう少し遅いだろうが、47分は切っているはずだ。最初はやや飛ばしたが、全体的にきれいにタイムをキープ、快挙の自己新である。

 われながら(というか私にしては)速い、すごいなあ、と感心する。約一年前に49分を切れて、そこから2分ほど速くなった。しかも脚へのダメージが少ないフォームに改善されたと思う。フォームを改善して速くなったのではなく、速くなった結果フォームが改善した。

 そして疑問なのだが、こんなに10kmは速くなっているのに、なんで自分のフルマラソンのタイムは一向に上がらないのだろう。10kmを46分台で走れるならば、42kmを4時間以内で走れてもよいではないか。でも後半が失速してダメダメなのだ。

 あらためて、フルマラソンの練習ってどうすればいいんだ、と基本的な問いかけに直面している。10kmはもちろん、ハーフマラソンでも、フルマラソンの練習にあまりなってない気がする。やはり多くの本や雑誌に書いてある30km走をすべきなのだろうか。しかし一人で30km走る気にはなれないし、30km走は体のダメージが心配で、それならいっそフルマラソンの大会に出たい。

 と、私は何だかんだ考えているだけで一向に速くならないわけだが、こんな風にアレコレ考えるのがフルマラソンの楽しいところなのだ。基本的に、走ってるとき以外は全部楽しい。

朝日2面10/30、名古屋アドベンチャーマラソン

 遅まきながら、10月30日の朝日新聞・日曜版の2面「憲法を考える」の特集で、『決め方の経済学』の議論とともに、私のインタビューが取り上げられました。

 さて、この日は「名古屋アドベンチャーマラソン」というフルマラソンに出ていた。

 今年は春に、政治思想学会と日本経済学会で、すでに2度名古屋に行った。そんな街のローカルな市民マラソンに、なぜ新幹線に乗って宿泊費を出して、42kmを走りに行くのか、われながら謎である。

 レース前日、名古屋に移動するとき本気で「こんなのただのムダ遣いではないのか」と思い始めた。だから新幹線では、指定席より500円安い自由席に座った。だが歩きたくないので名古屋駅からホテルまではタクシーに乗った。合理的なのか。

 スタート会場は庄内緑地公園という所で、庄内川の河川敷がコースだ。「アドベンチャー」ということで、コースの途中には、草むらっぽいところや、橋や、階段もある。河川敷は走り馴れているので違和感はないが、階段はやめてください。

 今回の戦略は「行けるまで行く、落ちるなら落ちるにまかせる」だが、このように勢いと運命に任せる方針を「戦略」と呼んでよいのかは知らない。ただまあ、わたしもフルマラソン3回目にして、ようやくそんな風に、いい加減に考えられるようになったのだ。

 んで、結果は、前半21kmが1時間52分で、後半21kmに2時間30分(!)かかった。計4時間22分である。後半でスピードが落ちるにもほどがある。その「戦略」の通りだが、もっとスローにスピードが減速することを望んでいた(速度は遅くなるが、遅くなりかたは遅い)。これではサブ4を目指すどころか、4時間半を切らずにすんだという感じだ。

 21kmあたりから微妙に脚がつりはじめた。これまでレース中に脚をつったことはないし、諸栄養を摂取しながら走っているので、主因は暑さであろう。周りにもつった脚をストレッチしている人が散見された。まあ、自然との遊びなので仕方ない。

 いつものように「早く終われ」「なぜこんなことに」「歩きたい」と思いながら走ったが、フルはやはり良い。ハーフでは味わえない哀切がある。文学性が高いといってもよいかもしれない。36kmあたりでGPS時計の充電が切れてしまったが、それはそれで良かった。

 終盤はタイムを気にせず、翌日の仕事に残す体力を少し気にして、のんびり走った。翌日の月曜は、朝8:30から内閣府でミクロ経済学の研修をしているから、満員電車と立ち授業で、脚を使うのだ。

 この翌日の授業はきちんとできたので、よかった。その後は三田の研究室に移動して、普通に仕事した。夕方にはセミナーのホストまでした。帰り際の電車のなかで、無事に今日を終えられた安堵とともに、ああ、なんとつまらない大人になったのだろうと思う。

 どうしてこんな風に、自分の役割をこなしたり、子供の歯列矯正を気にしたり、カビの生えた布団を粗大ごみに出したり、そんなことばかり考えているのだろう。もっとこう、豪快で、反骨精神に溢れた、そして反社会的なものになってもよかったのではないかと思う。

 この週はひたすら勤労した。そして翌週の月曜は、内閣府での授業のあと、神保町に移動して、ビジネスホテルのデイユースで書き物のチェックをして、有斐閣の勉強会で本の作成について話し合った。夜にはジムに行き、翌日に風邪を引いた。免疫が落ちていたのだろうか。

 「休む」って何だ。休みを取れているからフルマラソンなんて出られるわけだが、フルマラソンで身体は休まらない、と今回気付いた。

 そんなわけでいまは「ルルアタックEX」を飲んで体を休めている。わたしはトラネキサム酸とトランス脂肪酸をよく混同するが、前者は「ルルアタックEX」に入っている薬物で、後者は「クリスピークリーム」に入っている油である。

【指定第2類医薬品】ルルアタックEX 24錠

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WIRED Vol. 25、よこはま月例マラソン

 最近発売された『WIRED』日本版Vol. 25に、読み物「コンドルセの多数決論:あなたにそれを使う覚悟はあるか?」を寄稿しました。 WIREDとコンドルセ(そして僕)の相性はいいぞ(進歩史観なところであろうか)。われながら力作です。

WIRED VOL.25/特集 The Power of Blockchain ブロックチェーンは世界を変える

WIRED VOL.25/特集 The Power of Blockchain ブロックチェーンは世界を変える

 

  WIREDオンラインには、編集長によるロングインタビューが掲載されています。7000字以上あるよ。夏に山ほど多数決の話をしたり原稿を書いたりして、色々考えて、ここでの話が一つのまとめです。

 今日は横浜月例マラソン20kmの部を走ってきた。GPS時計によるマイ計測だと1時間42分07秒であった。

 わたしは一度でよいのでフルマラソンで4時間を切るサブフォーというものを達成したい。だが、なかなか思うようにならん。そんで、今回の20kmは月末のフルのための練習というか、調整である。

 問いは「自分はキロ5分のペースを20kmを維持できるか?」である。これができるなら、フルの後半で失速しても、どうにかサブフォーが可能な気がする(何となく)。結果の1時間42分で20kmは、平均すると5分5秒である。これだけ見ると、まあ、そんなに悪くない。しかしペースは維持できなかった。これでは残りの22kmをまともにはしのげない。

  • 1km 4:45 お約束のオーバーペースからスタート
  • 2km 4:54 このあたりのペースに身体が慣れている
  • 3km 4:52 無の境地
  • 4km 4:56 無の境地
  • 5km 4:53 無の境地
  • 6km 5:10 水飲んだ
  • 7km 5:03 水飲むとペースが落ちる
  • 8km 4:59 5分を切れた
  • 9km 5:02 あ、5分を切れてない
  • 10km 5:01 ま、いいか
  • 11km 5:04 音楽聴き始めた「ぜんぜんぜんせからぼくはー」
  • 12km 5:07 音楽を聴くと確実に集中力が落ちる
  • 13km 5:07 だが軽快なのでよい
  • 14km 5:03 「おそ松さん」のOPソングはいいなあ
  • 15km 5:07 気分はよい
  • 16km 5:12 音楽聴くのをやめて、ランに心を戻す
  • 17km 5:16 静かである
  • 18km 5:24 脚が重くなった←重くなるのが早すぎる
  • 19km 5:24 脚が重くなった←要するにこのペースでフル前半を走るのはムリ
  • 20km 5:25 なんとかペースをキープ
  • 残余 0:22
  • 合計 1:42:07

 という、ペースをキープはできませんなあ、な話である。脚が重くなるのを、せめて30kmあたりに持ってこないといけない。それが可能な前半のペースはどれくらいなのだろう。5分20秒くらいならできるのだろうか? それで35kmを過ぎてからの「本番」を耐える力は残っているのか? またもや最後の8kmに1時間かけるのか?

 常日頃10kmばかり走っているので、42kmの長距離が全然つかめないのだ。よく雑誌には30km走の練習を取り入れようと書いてあるし、それは有効なのだろうと思うのだけど、そこまでできない。

 と、まあ、冷静に現実を見つめると、サブフォーは無理そうである。何となく、4時間7分くらいならいける気がする。しかし最初からそんなタイムを狙って走っても楽しくなかろう。

 イーブンペースでなく、前半で飛ばしたいのは、ほとんどわたしの人生哲学というか性格であって、あらゆるものごとは余裕がないと後半に力を発揮できない。麻雀でも、東場で勝って南場で守るのが、高校以来の自分のスタイルだ。とはいうものの、マラソンにそんなものを絡めるべきではなくて、これまでの2回は、いずれも後半に大失速しているので、イーブンペース寄りにすべきだ。でもイーブンペースって、すごく難しい。

 以上、ぐだぐだ言っているが、わたしにとってマラソンとは、こういうことを、ああでもない、こうでもないと一人でムフフと考える遊びなので、単に楽しんでいるだけだ。走った後は余韻を何度も反芻するのも遊びのうちである。たった42km走るだけで、なんと長いあいだ楽しめるのだろう。

 さて次の土曜日は、朝日カルチャーセンターで話します。すでに多くのお申し込みをいただいており、深謝でございます。まだ申し込み可能です。

日経夕刊10/11ノーベル経済学賞

 ノーベル経済学賞は、自分がもらえないのはさておき、ほとんど毎年、発表の時間にウェブ中継を見ている。今年は家族とファミレスに行って、一人だけスマホを見ていた。ノーベル賞は、当てる人は当てる(昔、先輩に5年連続で当てた人がいた)。それには経済学全体を見渡す学知と、絶妙な下世話さが必要だと思う。わたしは当たらない。学知が乏しいうえ、下世話さが足りないのだ。

 選考委員のなかの実力者は、マクロ経済学系がクルセル、ミクロ経済学系はショストロームだろう。他のスウェーデン人を思い付かない。なお選考委員は大抵、自分の業績書に「委員です」と公開しており、そもそもスウェーデン人の経済学者はそう多くないので、「こいつかな?」と検索するとけっこう当たる。

 わたしは留学中にクルセルからマクロを習い、ショストロームは兄弟子にあたる(ともにトムソン先生の弟子なのだ)。といっても親しいわけではないが、彼らの学問志向や人間関係から、勝手にいろいろ推測する。

 結局、今年は対象分野が「契約理論」で、ハートとホルムストロームが受賞した。正統派の、きわめて手堅い授賞である。それで、日本経済新聞に電話取材でコメントを寄せました。本日10月11日(月)の夕刊に載っています。

  受賞の説明を読んで意外だったのは、Holmstorom (1979) "Groves schemes on restricted domains" Econometricaが引用されていないことだ。この論文はメカニズムデザインの金字塔のひとつで、「どのようなスムーズ定義域のもとでも、効率性と耐戦略性を満たすメカニズムは、VCGメカニズムだけである」という大定理を示したものだ。最高にエレガントな公理化である。

 これはとても有名な論文で、契約理論に関連付けようと思えばできるし、メカニズムデザインのプロであるショストロームが知らないわけはない。なのに授賞理由にこの論文を紐づけていない。メカニズムデザインには2007年にすでに授賞しているし、ほんとうに契約理論への貢献だけを理由にしたのだなあ、と思った。授賞のしかたとしては綺麗である。 

メカニズムデザイン―資源配分制度の設計とインセンティブ

メカニズムデザイン―資源配分制度の設計とインセンティブ

 

  そんな今日は、一限の授業を終えてから、一日中「人頭税」の文献を読んで過ごした。人頭税とは、担税能力に関係なく一人あたりいくらで課税する、歴史的に悪名高いやつである。人間の間引きがよく起こる。

 かつてイギリスではサッチャーがこれを導入しようとして退陣に追い込まれた。日本でも(あるいは琉球でも)、宮古島や八重山で1637-1903年のあいだ、苛斂誅求をきわめた人頭税が課されていた。 カナダではかつて中国系移民に対して、やはり過酷な人頭税を課していて、2006年にはカナダ政府が歴史認識の表明として公式に謝罪をしている。

 なぜ、わたしが目にする人頭税は、いずれもひどい重税なのだろう。課税というか、ほとんど奴隷化のレベルである。いっそ奴隷化を人頭税の極点と理解すればよいのだろうか。それとも軽い人頭税は、人目につかないだけなのだろうか。この辺のことがまだよく分からない。

近世琉球の租税制度と人頭税

近世琉球の租税制度と人頭税

  • 作者: 沖縄国際大学南島文化研究所,沖縄国際大南島文化研究所=
  • 出版社/メーカー: 日本経済評論社
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八重山の人頭税 (1971年)

八重山の人頭税 (1971年)

 

 

 

 

朝日「天声人語」10/10ほか

 本日10月10日(月)の朝日新聞「天声人語」に、国民投票に関するわたしの発言が掲載されています。よろしければどうぞです。取材を受けた日の夜、国民投票が和平締結に待ったをかけたコロンビアの大統領にノーベル平和賞が与えられたことを、印象的に覚えています。

 イギリスのEU離脱をはじめ、コロンビアでの和平締結に反対、ハンガリーでの移民拒否など、国民投票は嵐のように世界を吹き荒れています。日本でも憲法改正の国民投票が遠からず行われそうです。

 国民投票は、民意を明らかにするのではなく、民意が明るみに晒されるのだという認識を、そろそろきちんと持ったほうがよいのではないか。それは鋭利な刃物のようで、うまく使うと調理に便利だが、下手に使うと自傷他害の惨劇を招いてしまう。といった記事を少し前に「週間エコノミスト」に寄せました。 

週刊エコノミスト 2016年08月30日号 [雑誌]

週刊エコノミスト 2016年08月30日号 [雑誌]

 

 国民投票の多数決については、近々「朝日カルチャーセンター」でまとまった話をします。よろしければお越しください。 

 そして、これも近々ですが、「WIRED」の雑誌にコンドルセをめぐる記事、WEBのほうに多数決をめぐるロングインタビューが掲載されます。日にちが確定したらまたここでアナウンスします。

 ところで今日はノーベル経済学賞の発表日です。わたしは取れなさそうですが、自分の関連分野の受賞者が出たら、某新聞にコメントを寄せる予定です。発表を楽しみに待っています。

  話を変えます。いま「公正」についての8000字の原稿を書いている。共著の本で、締め切りは9月末で、いま4800字まで来た。正直まだ10月10日なので、そんなに迷惑な遅れ方ではないはずだ。だが、この後、残りの文章をどう書き進めていいかわからない。そして、この連休中にどうにかしないと、そろそろまずい気がする。んで、始めてきちんと『ニコマコス倫理学』を読んでいるが、面白さをつかむ能力が自分に足りない。もっと、こう、公理的に議論を進めてくれないか、と思うのだ。なぜ、そう、頭ごなしに比例分配を持ってくるのか? 慣れの問題もあろうから魂で読んでいる。 

ニコマコス倫理学 (西洋古典叢書)

ニコマコス倫理学 (西洋古典叢書)

 

 ちなみにわたしは「なぜ比例分配でなければならないか」を、めっちゃ真面目に数学的に証明したことがあるので、関心のある方は下記の論文をご覧いただきたい。自分の論文のなかでは最も引用数が高い。Ju, B.-G., Miyagawa, E., and Sakai, T. による、Journal of Economic Theoryの2007年巻頭論文。

Non-manipulable division rules in claim problems and generalizations

ナッシュ均衡

 4人で本を作成している。1人あたり8000字×3本だ。締め切りは9月末。こういうのって、みなさん、締め切り通りに書くものなのか? 多忙な彼らはどうせ間に合わないだろうと思って、完全に放置していた。「誰も間に合わない」がナッシュ均衡になると予測していたのだ。

 そんで「どーしよっかなー、いつ書こうかなー」とフンフン思っていたら、4人のうち1人が、3本揃えてさっさと提出してしまった。これは理論家として予測していなかった。非難しようのない、巧みな嫌がらせである。つくづく自分の色んな才のなさを感じる。

 というわけで、9月20日を過ぎてから、あせって書き始めた。いま1本だけ草稿を書けた。たぶん9月末には「ごめんなさい、2本だけ草稿を用意しました」と謝罪するだろう。とりま「多数決」はできて、「GDP」はどうにかなるかもで、「公正」は間に合わない。

 夏に遊んでいたわけではない。今年の8月には、1回しか自転車に乗っていない。毎週1万字は書いていたし、色んな人と喋った。家族で旅行にも行った。よい夏だった。

 そして夏が終わって、片付かない原稿だけが残った。明日から授業が始まるから、もう時間はない。9月が40日まであることを祈る。 

18歳からの格差論

18歳からの格差論

 

 

日経書評9/25「オンラインデートで学ぶ経済学」

 日本経済新聞9/25日曜版に、ポール・オイヤー『オンラインデートで学ぶ経済学』(NTT出版)の書評を寄稿しました。「この一冊」に挙げられています。

 今日の日経新聞のこの面は、わたしの書評と、土居丈朗教授の「経済論壇から」に櫻川昌哉教授が載っており、何というか、塾生諸君は必読だーな感じです。

 『オンラインデートで学ぶ経済学』は、チープトークやシグナリングに関する話題の多い、情報の経済学の実にすぐれた書籍です。相手に自分を金持ちだと信じてもらうためには、札束を燃やす動画を婚活サイトにアップすればよい(金持ちのシグナル)、だがそれはそれで品性に欠けると思われるぞ(下品のシグナル)、といった話なんかもある。カネ、容姿、人脈、すべて婚活にはポジティブだ。

 婚活という甘くなりうるテーマも、「陰鬱な科学」(dismal science)たる経済学の手にかかると、シビアで灰色になる。わたしはこういう話は好きというか、もう慣れたけれど、スウィートでないのは確かだ。だがほら、そこは甘い霧に惑わされるよりも、灰色の現実を透徹した眼差しで見抜きたいだろう?

 巷間にあふれる「ナントカの経済学」系の書籍に「またかよ」と飽いているあなたにも、おススメの一冊です。 

オンラインデートで学ぶ経済学

オンラインデートで学ぶ経済学

  • 作者: ポール・オイヤー,安藤至大(解説),土方奈美
  • 出版社/メーカー: エヌティティ出版
  • 発売日: 2016/06/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 ところで今日は、毎月末の日曜日にある、川崎月例ランに出場してきた。10kmの部が、暑さのために5kmに短縮されていた。ぬおー、ざんねんだが仕方ない。自分にしては早めに走った。たしかに暑かった。

  • 1km 4:10
  • 2km 4:23
  • 3km 4:37
  • 4km 4:34
  • 5km 4:22
  • 残余70m: 0:15
  • 計 22:21、平均4:25/km

 うーん、まあ、こんな感じである。わたしは10kmならキロ4:25は無理なので、5kmを試せてよかった気もする。要するにこのペースで10km走ると45分を切れるわけだ。無理である。

 暑いと疲労する。帰りにドトールへ寄って、自分が書いた日経の書評を読みながら、アイスカフェオレを飲んだ。うまく書けてるなあと感心。三回読んだ。

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

 

 

 

いろいろ告知

 最近のラジオ出演と、告知でございます。

  • 9月12日(月)に文化放送「くにまるジャパン」に出演しました。

『くにまる「多数決を疑う」塾2』 - くにまるジャパン

  •  9月は毎週水曜日にTBSラジオ、荻上チキさんのSession 22のコーナー「NEC WISDOM Square」に出演しています。次回、最終回は9月28日の放送です。

  • 10月22日(土)に「朝日カルチャーセンター」で多数決についてひとコマ喋ります。関心のある方はぜひお越しください。

  • この夏に『多数決を疑う』(岩波書店)の韓国語版が出版されました。少し前に韓国の主要新聞のひとつ「中央日報」から著者インタビューを受け、近々掲載される予定です。ちなみに『マーケットデザイン』(ちくま新書)は台湾と中国本土で翻訳が出されており、『決め方の経済学』(ダイヤモンド社)は台湾での翻訳が進行中です。経済学者としては、グローバル化とか、グローバル市場とか、実体験できて勉強になります。

東京マラソン当選

 2017東京マラソンに当選した。倍率は12.2倍。どうせ当たらねえよと思って、適当に「ハイハイ、申し込むだけ申し込むねー」な感じで申し込んでいたので、当たって超びっくりだ。9月16日(金)にそのメールが届いたのだけれど、最初は何かの間違いかと思った。

 10年以内に一度出場できるといいなと思っていた(まだ出場してないが)。昨シーズンは父が当選して、快走していた。

 さて、当選して手続きは完了というわけではない。期日までに参加費を入金せねばならないのだ。さもなくば参加は取り消しだとメールで脅されている。そこで入金リンク先や、東京マラソンのサイトをうろうろしてみたが、入金の仕方がさっぱり分からない。

 サイトは見かけはきれいだが、非常に使いづらい。重要な情報がどこにあるか分かりにくい。そのくせ色々入力してみると「入金期日は終了」みたいな誤メッセージが出る。あまりよい気はしないが、おそらくこれは新豊洲市場みたいなものなのだろう。

 そのうち入金の仕方が分かって、オンラインで手続きをして、近所のセブン・イレブンに10,800円を入金に行った。こんな金額で路上封鎖して遊ばせてくれるとは有り難い、ご迷惑をおかけする皆さまには申し訳ない、としかいいようがない。

 家に戻ると、運営から「先ほどのメールのリンク先は間違いでした」とメールが届いていた。入金したてでいやなタイミングだ。さっきの入金がうまくいったのか、ちょっと心配になる。普通こういうのは入金が済むと「入金できました」とメールが来るものだけれど、来ない。まあ領収書は取ってあるので大丈夫だろう。

 翌日、無事に「入金できました」のメールが届いた。よかった。

 3万5千人が走る大規模マラソンなんて想像もつかない、と思ったが2016横浜マラソンは2万5千人であった。まあ、大体あんなもんなのだろうか。新宿の都庁前からスタートして、街中をまわって、東京駅でゴール。夢のようなコースだ。風邪をひきませんように、晴れますように、平和でありますようにと、願わずにはいられない。

日経書評9/18『決め方の経済学』

 今朝は9月の「よこはま月例マラソン」10kmの部に出場してきた。自己計測のタイムは47:45で、先月の川崎月例での47:30に続き順調だ。コンスタントに47分台が出せるようになった感じがする。

 このまま今シーズンのどこかでフルを4時間以内に走れないものかと思うのだけど、まあ、まだ実力不足であろう。たぶん4時間10分くらいはいけると予想するのだけれど、どうなるだろう。

 帰宅してメールを開くと父から「日経の書評に出ているよ」とメッセージがあった(どうもありがとう)。そんで日本経済新聞(日曜版)を開くと、『決め方の経済学』に書評をいただいていた。ナイス日曜日。評者の小関広洋さま、選者の皆さま、どうもありがとうございました。 

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

「決め方」の経済学―――「みんなの意見のまとめ方」を科学する

 

 

 

横浜ブルーライトマラソン9/10

 横浜みなとみらいで開催された「横浜ブルーライトマラソン」のハーフに出場してきた。秋のフルに向けての慣らしのつもり。

 以下のレポートでは、コースへの不満みたいなことも書くが、もちろん不満ではない。「その条件を楽しむ」みたいな遊びなのだ。で、とても楽しかった。

 コースは、往復2.1kmのコースを10回まわるという、かなり単調なものだ。「ブルーライト」とはいうもののスタートは15時半。気温は30度を超し、陽射しが強くて、とにかく暑かった。

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 コースはこんな感じで、ゼッケンは291番。路面は石なのでラン向きとはいいがたいが、「ツール・ド・フランスもよく石畳を走っているのでアリ」だと何となく思った。ところで自分はゼッケンを真っ直ぐシャツにピン留めできたことがない。

 1時間50分以内にはゴールしたいと思っていたが、あんまり暑くて無理だと3kmの時点であきらめた。目標を熱中症にならないことに変えたが、この目標は今すぐリタイヤすれば直ちに達成されるだろう。しかしまあ、しんどくない程度のペースで走る。

 コスプレしてる人が結構いて、しかも速い。暑いだろうに、すごいなあと感心。横浜マラソンのシャツを着てる人も何人かいる。自分も着てくればよかったかも。

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 海沿いで風景は良好、みなとみらいの「横浜らしいコース」ではある。少なくとも高速道路を走る横浜マラソンよりよほど横浜っぽい(横浜マラソンを褒めている)。海風がたまに強く吹く。

 コース幅は狭いが、参加人数がそう多いわけではないので(2-300人?)、わりと早々に渋滞はなくなった。しかし暑い。シェード付きのキャップをかぶってきてよかった。

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 西日が強くてへとへとになる。なぜこんなことをしてるのか分からない。今回はハーフだからまあ耐えられるが、フルなんか走りたくないと心底思う。だが10月末に今季一本目の予定を入れている。誰も喜ばないのになぜだ。考えたら負け、思考停止こそがオレの勝利!

 往復コースを10周というのは、つまらんが、ペースはつかみやすい。1周1周が短いので、「まだかなあ」という心の負担が少ない。各周ごとに水分が補給できて、補水スポンジをもらえるのも有り難い。

 終盤あたりの時間からは暑さが和らいだが、奪われた体力は戻らず、淡々と走る。

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 フィニッシュゲートに到達。何だかんだいってもハーフマラソンはあっという間に終わる。この写真はガッツポーズをしているのではなく、右手に付けた計測器をタッチする準備。

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 タッチでゴール、1時間55分26秒。ハーフマラソン一般には速いタイムではないが、今回の諸条件(とくに気温)のもとでは、まあまあの健闘ではなかろうか。やなことにもう41歳なのだが、35歳から44歳までの男子部門37名のなかでは、9位だった。べつに誰かと競っているわけではないが、一桁は何となく嬉しい。新シーズンの幕開けとしては、そう悪くないと思う。

 地下鉄まで歩いて行って、家路についた。駅では階段ではなく、エスカレータに乗った。今回も「男梅グミ」に助けられながら走り、またかなり小まめに水分を摂ったつもりだが、脱水気味で疲労感が強い。

 電車を乗り換えて、駅で家族と待ち合わせて、食事に行った。その夜は余韻を味わいながら、ぼんやりと過ごして、早めに眠りについた。

川崎月例10km(2016年8月)

 昨日、目覚めたとき、あまりに涼しかったので「今日の川崎月例ランはシリアスに走ろう」と心に決めた。こういうのは自分で決めているのか、わたしのなかの何か本体が勝手に決めているのか、よく分からない。俺は自分の意志のしもべなのだ。

 とにかく心はそう決まっていた。そう決まった以上、シリアスにやるだろう。これは具体的には、10kmの自己ベストを47分台で更新すると目指すことだ。

 キロ4:45で10kmを走れば、47分30秒になる。10km走といっても、コースは真っ直ぐというわけではないので、カーブやら斜めの移動やらで、実際には何十・百メートルか多く走る。それを考えると、キロ4:45で10kmのコースを48分未満で走りきるのは、ギリギリ可能か否かのラインだろう。

 気候さえよければ、がんばって4:45を10km続けることは、しんどいだろうけど、無理ではない気がする。というわけで最初に飛ばしたりせずに、ずっと同じ速さのイーブンペースを目指す。ぜんぜん面白みのないストラテジーだが、シリアスさを面白さより優先しているのだ。結果はつぎの通り。

  • 1km  4:47 スタートが混雑したのと、飛ばさなかった
  • 2km  4:39 これで最初の1kmの2秒オーバーをカバー
  • 3km  4:45 ぴったり
  • 4km  4:45 ぴったり
  • 5km  4:50 一瞬、気が抜けた
  • 6km  4:37 気の抜けをカバー
  • 7km  4:41 しんどいが、目標達成できそうな気がすると計算
  • 8km  4:47 つかれてきたが、まあ手堅い走り
  • 9km  4:50 これでも目標達成できそう
  • 10km  4:32 ラストスパート
  • 残余70m  0:17 この残余が今回は少ない、うまくコースを取った
  • 計  47:30 やったぜ!!

 GPS時計によると、平均キロ4:43でこの10kmコースを走った。うーん、初めて試してみたけど、やはりイーブンペースだとタイムがいいのだなあ。

 感激である。 走歴ようやく2年で、川崎月例ランは15回目の出場。自分としては思いがけず、ここまで伸びた。最初のころは「60分切れるかなあ」「いつか50分切りたいなあ」と思っていたし、けっこうなケガもした。徐々にタイムを伸ばして、ついに47:30。しみじみ嬉しい。夏も終わりかけで、もうすぐ新しいシーズン。秋にはハーフとフルに一回ずつ出場する予定。

 帰りに本屋でラン雑誌を買って、ご機嫌で帰宅した。新しいウェアが欲しい。 

Running Style(ランニング・スタイル) 2016年10月号 Vol.91[雑誌]

Running Style(ランニング・スタイル) 2016年10月号 Vol.91[雑誌]